『西洋雑詠(七首其五)』(189番26歳作)橋本左内(日中バイリンガル詩吟 第45作)

《西洋雜咏(七首其五)》橋本左內26歲作189番(中日雙語吟誦第45作)

 幕末の福井藩士橋本左内の詩を採り上げるのは3回目です。原文・訓読・口語訳は、前川幸雄氏による『橋本左内の漢詩』の第1冊目サブタイトル『見果てぬ夢の世界』に従いました。
 口語訳
 電話が伝わって来て、口頭で話すのが快い。
 役立つ器械で全く頼りになる。二本の糸で遠方と結ばれるだけだが。
 今から後は、もはや旅人も故郷のことを思って、夢を見るということもないであろう。 万里も遠くの雲のように見える山々が隔てる故郷の人とも、となりの人のように話し合うことができるのだから。

  這是第三次採用幕末福井藩士橋本左內的詩。 原文、解釋等,參攷了前川幸雄《橋本左內的漢詩》的第1册副標題《看不完夢的世界》。
  解釋
  電話傳來了,口頭交談很愉快。
  有用的器械完全可靠。 雖然只是用兩條線和遠方連接。
  從現在開始,旅行者也不會再為故鄉而做夢了吧。
  因為可以和萬里無雲群山相隔的故鄉,像鄰居一樣交談。

 この一首は『西洋雑詠』185番から191番7首中の5首目です。
 185番 攘夷論者に対して西洋にも学ぶ必要ありと説く
 186番 西洋人と中国人の比較について
 187番 西洋の航海術
 188番 西洋人の海外への進出意欲と勇気について
 189番 この詩
 190番 蒸気機関車について
 191番 西洋の風景について

  這一首是《西洋雜咏》185號到191號7首中的第5首。
  185號; 對攘夷論者說有必要向西方學習
  186號; 關於西方人與中國人的比較
  187號; 西洋航海術
  188號; 關於西方人進軍海外的意願和勇氣
  189號; 這首詩
  190號; 關於蒸汽火車
  191號; 關於西方風景

 この詩の電話機については、安政2年(左内22歳)江戸遊学時代の旅日記に「伝言器拝見」とあります。また、152番に25歳作の長編の古詩『英吉利船行』があり、イギリスが通商を求めて来ていることをとりあげ、中国でのアロー号事件やインドでのセポイの反乱でのイギリスの圧倒的な軍事力について触れており、左内が西洋事情を詳細に把握していたことがわかります。
 動画中の、蒸気機関車と電信機の画像は、ペリーが来航した際のアメリカ大統領から将軍に贈られた電信機と模型蒸気機関車です。模型蒸気機関車は、レールを敷設して、多くの日本人の前で運転が披露されたとのことです。その他に、時計、望遠鏡、小銃、サーベル、ラシャ、農具なども贈られたとのことです。

  關於這首詩的電話,安政2年(左內22歲)江戶遊學時代的旅行日記中寫著:“我看到了電話機”。 另外,他25歲時作品152號長篇古詩《英吉利船行》裏,列舉了英國尋求通商的情况,涉及了在中國的阿羅號事件和在印度的塞波伊叛亂中英國壓倒性的軍事力量,可以看出左內詳細掌握了西洋情况。
  視頻中的蒸汽機車和電信機的影像是佩里來航時美國總統送給日本江戶幕府將軍的電信機和模型蒸汽火車。 模型蒸汽火車鋪設了軌道,在很多日本人面前展示了駕駛。 另外,還贈送了手錶、望遠鏡、步槍、佩刀、呢絨、農具等。

 吟誦は、Vocaloidの初音ミク(日本語)と洛天依(中国語)に歌ってもらいました。

  吟誦是由Vocaloid初音未來和洛天依演唱的。

西洋雑詠(七首其五)    橋本左内 26歳作
電信伝来し快なる口陳
活機全頼 両条の綸
自今羈客 応に夢無かるべし
万里の雲山 比隣の如し

西洋雜詠(七首其五)
電信傳來快口陳
活機全賴兩條綸
自今羈客應無夢
萬里雲山如比鄰