㊹『足羽川逍遙』吉岡正道
㊸『歳晩』脇本俊一
㊷『尋越前海岸水仙園』黒田智津子
㊶『永平寺川偶成』(改作)杉本紀幸
㊵『瓶中梅』(032番19歳作)橋本左内
㊴『歲晚報恩講』秀苑
㊳『臨水田』筧みち子
㊲『題豐柿』三愚
㊱『牽牛花』(113番25歳作)橋本左内
㉟『漢廣』(詩經・國風周南)
㉞『桃夭』(詩經・國風周南)
㉝『螽斯』(詩經・國風周南)
㉜『巻耳』(詩經・國風周南)
㉛『蒹葭』(詩經・國風秦風)
㉚『河廣』(詩經・國風衞風)
㉙『淇奥』(詩經・國風衞風)
㉘『葛覃』(詩經・國風周南)
㉗『關雎』(詩經・國風周南)バロック宮廷舞踊調
㉖【修正入声音再録音版】『登鸛鵲楼』(王之渙)ハードロック調
㉕『登鸛鵲楼』王之渙(㉖に新録音あり)
㉔『迢迢牽牛星』古詩十九首
㉓『回鄕偶書』賀知章
㉒(番外編)『般若心経』
㉑『遊園不値』葉紹翁
⑳『柏樹關』自作
⑲『永平寺川』自作
⑱『題西林壁』蘇軾
⑰『春望』杜甫 五線譜追加版
⑯『早発白帝城』李白 五線譜追加版
⑮『出塞』王昌齢
⑭『客至』杜甫
⑬『清明』杜牧
⑫『小池』楊万里
⑪『偶成』朱熹
⑩『絶句四首 其三』杜甫
⑨『早発白帝城』李白 (⑯に新録音あり)
⑧’『春暁』孟浩然 日本語漢字音追加版
⑧『春暁』孟浩然 初版(⑧’に新録音あり)  
⑦『楓橋夜泊』張継
⑥『陽関三畳』王維
⑤『春望』杜甫(⑰に新録音あり)
④『静夜思』李白
③『贈汪倫』李白
②『垓下歌』項羽
①『黄鶴楼送孟浩然之広陵』李白
C番外編C 垓下歌 項羽 訓読 中国語朗読 中国語吟唱 京劇「覇王別姫」版 映画「項羽と劉邦」版
B番外編B 静夜思 李白 訓読 中国語朗読 中国語吟唱 龚琳娜版
A番外編A 春望 杜甫 訓読 中国語朗読 中国語吟唱(卞民岩版)

これまでの取組

至今為止的工作內容

    上のリストの逆順に、これまでの取組を振り返ります。

  按照上面作品一覽的相反順序,回顧至今為止的工作。

A(1981~)
 大学生時代に、中国語学習者として卞民岩先生の本格的な中国語吟誦(伝承吟誦)に接することができましたが、その後は遭遇することはありませんでした。国語科の漢詩の授業でも、NHKの『漢詩紀行』等にならって中国語音で朗読することはありましたが、吟誦できたのは、この『春望』だけでした。

A(1981~)
  在大學生時代,作為漢語學習者,我接觸到了卞民岩老師真正的漢語吟誦(傳承吟誦),但之後就沒有遇到過。 在語文科的漢詩課上,也有模仿NHK《漢詩紀行》等用中文音朗誦,但能吟誦的只有這首《春望》。

BC①②⑥(1995~)
 インターネットの発展で、中国のサイトで吟誦を探していましたが、小学生などが漢詩を覚えるために無理矢理作られたメロディーに載せられているだけという感じのものばかりでした。かなり時間を経て、音楽的にも質の高い、④の声楽家の龔琳娜と彼女の夫のドイツ人音楽家のRobert Zollitsch(老鑼)の作品などを聞くことができるようになってきました。①から、2か国語詩吟として、中国の吟誦旋律に、訓読漢文(書き下し文)を載せて吟誦するようになり、2か国語詩吟バイリンガル吟誦などと呼んできました。また、旋律にあった伴奏をつけるようにしてきました。

BC①②⑥(1995~)
  由於網絡的發展,我在中國的網站上尋找吟誦,但都是小學生等為了記住詩而勉强製作的旋律。 經過相當長的時間,在音樂上也能聽到高品質的聲樂家龔琳娜和她的丈夫德國音樂家Robert Zollitsch(老鑼)的作品等。 從①開始,作為2國語言詩歌吟誦,在中國的吟誦旋律中,登載日語譯文進行吟誦,被稱為中日雙語吟誦等。 另外,我還做了符合旋律的伴奏。


 採譜できる伝承吟誦に出会うことができました。現在でも、伝承者が高齢であったり、無伴奏で吟じているものは音程がとれずに採譜が困難であったりするものが多いのが現状です。③については、華鋒という伝承者の吟誦を徐一楊という11歳のお嬢さんが吟じてくれていて、採譜が容易でした。


       我遇到了可以采譜的傳承吟誦。 現在,傳承人年紀大了,無伴奏吟誦的錄音音程不好,有很多難以譜寫的吟誦,這是現狀。 關於③,一位叫徐一楊的11歲女孩子在吟誦華鋒的傳承吟誦調,很容易採譜。


 吟誦教育に取り組んでいる小学校特級教師の陳琴老師や中華吟誦の採集、整理、研究を行っている首都師範大学の徐健順教授などの実践を知ることができるようになり、依字行腔(その字の声調にそった旋律で吟じる)や平長、仄短、入声促、韻字拖音によって、平仄などの漢詩の音韻規則にも迫ることができてきました。動画では一字毎に平仄の違いを色で示すようになりました。


      通過依字行腔平長仄短促入韻字拖音,讓我們瞭解到致力於吟誦教育的小學特級教師陳琴老師、從事中華吟誦採集、整理、研究的首都師範大學徐健順教授等的實踐,平仄等漢詩的音韻規則也能逼近。 動畫中每個字都用顏色表示平仄的不同


 北京大学の楊芬さんが福建省福州の陳炳錚さんの吟誦調を琴を弾じながら吟じていらっしゃり、音程や拍子が非常にとりやすい上に、たくさんの作品を発表されていました。最も多く使わせていただいている吟誦伝承者です。⑧’からは、声調に合わせた旋律や平仄に合わせた歌い方の妙味を感じている中で、お経のように日本語の漢字音で吟じることで、中国語を学習していない方にも、私が感じ得たことを感じていただけるのではないかと思い日本語漢字音での吟誦も加えました。


       北京大學的楊芬一邊彈琴一邊吟詠福建省福州的陳炳錚的吟詠調,音程和拍子容易譜寫,而且發表了很多作品。 她是使用最多的吟詠傳承者。 ⑧’,在感受到配合聲調的旋律和平仄的唱法的妙趣的過程中,通過像佛經一樣用日語的漢字音吟誦,即使是沒有學習中文的人,也能感受到我感受到的東西,所以也加入了用日語漢字音的吟誦

⑯~
 中国語吟誦、日本語書き下し文詩吟、日本語漢字音吟誦、中国語吟誦という構成が定着し、動画の字幕の中国語と日本語の漢字音の表示については、平仄を入声や押韻も含めて色で分けて見ていただけるようにしてきました。中国語の声調に合わせた依字行腔についても視覚的に見ていただけるように、五線譜で旋律の上下がわかるようにしました。

⑯~
       漢語吟誦、日語譯文詩吟、日語漢字音吟誦、漢語吟誦的構成已經固定下來,關於動畫字幕的中文和日語漢字音的表示,平仄包括入聲和押韻在內,可以用顏色分開看為了能從視覺上看到與漢語聲調相匹配的依字行腔,用五線譜可以知道旋律的上下

⑲⑳
 自作の七言絶句にもメロディーをつけて、日中2か国語詩吟にしてみました。和製七言絶句ということで、日本語書き下し文からスタートさせました。

⑲⑳
       在自己創作的七言絕句中也加入了旋律,試著吟誦了中日雙語吟誦。 因為是日本人作的七言絕句,所以從日語譯文開始了。


 入声音の発音を修正しました。
 舘野由香理氏や黒沢晶子氏の入声p音についての研究により、入声の理解を深めることができました。
 第8作から、日本語漢字音でも吟誦するようにしてきました。日本語漢字音では、漢字音の2つ目の拍が歴史的仮名遣いで「キ・ク・チ・ツ・フ」のどれかになるか(常用漢字中で365字)によって入声の字が識別できます。つまり、平仄の変化を楽しんだと思われる詩のおもしろさを、日本語漢字音で感じやすいことになります。
 ただ、「キ・ク」の入声k音字(常用漢字で219字)や「チ・ツ」の入声t音字(常用漢字で100字)は、今までもそれなりに歌ってきたと思いますが、「フ」の入声p音字(常用漢字で46字)をどう歌うかがはっきりしていませんでした。入声k音や入声t音では、促音化する規則性が明確なのに対して、入声p音は規則性がないようなのです。
 この第26作の中には、「入」の字が出てきます。入声の発音と同じように明確に促音化して「ニッ」と発音できる例ということです。
 また、日本語漢字音だけでなく、完全に自己流ということになりますが、中国語の発音にも、k、t、p音をつけて歌ってみました。日本語のように拍になることはないためでしょうか、1音の韻尾として違和感を感じませんでした。


  修正了入聲音的發音
  通過對館野由香理氏和黑澤晶子氏的入聲p音的研究,加深了入聲的理解。
  從第8作開始,我就開始吟誦日語漢字音了。 在日語漢字音中,漢字音的第二個拍子是歷史假名用法,可以根據“キ・ク・チ・ツ・フ”中的哪一個(常用漢字中為365字)來識別入聲字。 也就是說,用日語漢字音容易感受到被認為是享受了平仄變化的詩的有趣之處。
  但是,“キ・ク”的入聲k音字(常用漢字219字)和“チ・ツ”的入聲t音字(常用漢字100字),至今為止也唱得容易,但是“フ”的入聲p音字(常用漢字46字)怎麼唱還不清楚。 在入聲k音和入聲t音中,促音化的規則性很明確,而入聲p音卻沒有規則性。
  在這第26作中,出現了“入”字。 和入聲的發音一樣,可以明確地促音化,發音為“ッ”的例子。
  另外,不僅僅是日語漢字音,完全是自己的做法,在中文的發音上也加上k、t、p音進行了吟誦。 大概是因為不像日語那樣複音節吧,作為一個音的韻尾沒有感覺到不協調。

㉗~
 第27作からは、しばらく詩経に集中しようと考えています。中国でも古典教育が重要視され、10年ほど前からWeb上などでも吟誦教育についても知ることができるようになりました。詩経がよくとりあげられていたことは知っていたのですが、作詩を始めたところで七言絶句に注力し自作詩も吟じてみたいとして取り挙げずにきてしまっていました。
 また、白川文字学と詩経についても古代中国文学が関係していないはずはないだろう程度の理解であったのですが、日中2か国語詩吟の26作までの取組を白川静漢字教育賞に応募したことをきっかけに、白川静博士が古代歌謡の詩経と万葉集の比較にあたり、甲骨金文や古代人の信仰習俗等に関する民俗学的方法から研究し、従来の説文解字にとらわれない独自の漢字学を打ち建てられたことを知りました。また、白川静博士が福井県福井市出身、白川静博士の恩師である橋本循氏も福井県越前市(旧今立町)出身であることを詩経について調べていく中で知ることができました。
 旋律では、これまで最も多く利用したのが楊芬さんの吟誦で、ネット上で彼女の演奏などを視聴して採譜していました。半年前ほどに彼女の著書『斯文在茲 吟誦之路』を中国より入手しました。理解できていない部分がほとんどですが、吟誦について詳細に記述されています。付録として示範作品の楽譜冊子がついていて、冊子内のQRコードをたどれば演奏を聴くことができるようにもなっていました。詩経から7首の詩について吟誦例が示されています。これらをできるだけ、日中2か国語詩吟にしてみたいと考えています。

㉗~
  從第27部開始,我想暫時集中在《詩經》上。在中國古典教育也被重視,從10年前開始在Web上等也能知道關於吟誦教育。雖然知道詩經被很好地列舉出來了,但是剛開始作詩的時候就致力於七言絕句,也想吟誦自作詩,所以沒有列舉出來。
  另外,關於白川文字學和詩經,我也理解到了古代中國文學不可能沒有關係的程度,但是以中日雙語吟誦的26部作品應徵白川靜漢字教育獎為契機,白川靜博士在比較古代歌謠的詩經和萬葉集時從甲骨金文和古代人的信仰習俗等相關的民俗學方法研究,知道了不拘泥於以往的說文解字而建立了獨自的漢字學。另外,白川靜博士出生於福井縣福井市,白川靜博士的恩師橋本循先生也出生於福井縣越前市(舊今立町),在調查詩經的過程中得知了這一點。

  在旋律上,迄今為止使用最多的是楊芬的吟誦,我在網上觀看並譜寫她的演奏等。大約半年前從中國得到了她的著作《斯文在茲 吟誦之路》。大部分是不理解的部分,但詳細記述了吟誦。附錄附有示範作品的樂譜冊,追溯冊子內的二維碼就可以聽演奏了。從詩經中對7首詩進行了吟誦的例子。我想盡量把這些改成中日雙語吟誦。

㉜~
 楊芬さんの書籍にある国風の5篇を終えました。特級教師である陳琴さんの詩経吟誦数曲を聞くことができたので、もう少し国風の曲を増やそうとしてみました。
 また、男女互唱のものがあり、Vocaloid4対応の洛天依(中国語)や初音ミク、Vocaloid5対応のKaori(日本語)を導入しました。また、Vocaloid6から多言語混在対応になったので、Vocaloid6Akitoも導入しました。

㉜~
  結束了楊芬書籍中的國風五篇。 因為聽了特級教師陳琴的幾首詩經吟誦,所以試著再新增一點國風的曲子。
  同時,有男女互唱的東西,導入了Vocaloid4對應的洛天依(中文)和初音未來,Vocaloid5對應的Kaori(日語)。 另外,因為從Vocaloid6變成了多語言混合對應,所以也導入了Vocaloid6Akito。

 白川博士は、日本語において「歌」は、神に「拍つ」「訴ふ」と語源的に関係があると
している。『説文解字』は、秦始皇帝の篆書による漢字統一を経て甲骨や金文が発掘認知さ
れていなかった後漢になって許慎によってまとめられ、「歌」を形声字としているが、白川
博士は甲骨金文から得られた知見により「哥」「訶」「謌」に形義を求めなければならない
と した 。「可」は木の枝で「口(サイ)」(祝詞を入れる器)を「拍つ」ことで鬼神を動かす。
神に祈り実現をせまる「べし」という命令と「よし」という許可の二つの意味があるとし
ている。

  白川博士認為,在日語中,“歌”與神“拍”“訴”有語源關係。 《說文解字》經秦始皇篆書統一漢字後,甲骨和金文成為未被發掘認知的東漢,由許慎總結,以“歌”為形聲字,而白川博士根據從甲骨金文中得到的見解,必須向“哥”、“訶”、“岢”尋求形義。 “可”是用樹枝“拍”“口(犀牛)”(放入祝詞的器皿)來打動鬼神。 有命令神祈禱實現的“應該”和“好”的許可兩種意思。

㊱~
 福井市内在住の前川幸雄博士が『橋本左内の漢詩』全3冊シリーズを発表されました。絶句などを選んで日中2か国語で作品化していこうと思います。

㊱~
  住在福井市內的前川幸雄博士發表了《橋本左內的漢詩》全3冊系列。 我想選絕句等,用中日雙語吟誦作品化。

㊲~
 福井市内にある作詩の集まりを訪ねて仲間に加えていただきました。有名な作品を鑑賞することも大事ですが、市井の方々の作品を味わうのは非常に身近に感じられて、同人の皆さんの作品をどんどん吟誦していこうかと考え始めています。

㊲~
  我拜訪了福井市內的作詩聚會,加入了朋友。 欣賞有名的作品也很重要,但是品嚐市井的各位的作品讓我感到非常親近,開始考慮要不要不斷地吟誦同人們的作品。